bluerean's blog

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Tatcha文化の盗用。意外と気づかない...海外で人気の高級ジャパニーズスキンケアブランドの問題点。

ブログ訪問ありがとうございます!海外コスメ、お得情報、レビュー、その他海外ものについて書いていきます。

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どうもお久しぶりです、ぶるりあんです!

 

今回の記事は、1月の時点から(あたためすぎた...)記事にしようと思っていたTatchaというスキンケアブランドについてのbeauTEAです。

 

(beauTEAとは当ブログで、美容関連の裏を暴くぞ!という意味をこめた造語です。詳しくはこの記事へ→【頻出英語!】海外美容系YouTuberの使うスラングを解説➀:tea系 - bluerean's blog) 

 

 

最近、と言ってもしばらくたちますが、アリアナ・グランデの7 Ringsのタトゥーがアメリカ国内で「文化の盗用」と批判されたり、何かと耳にする「文化の盗用 Cultural appropriation」。

 

複雑な問題で色々な次元があるのですが、大まかにどういう意味かというと、他の人種や民族の文化を他人が表層的に模倣することです。

キーワードは表層的。その文化の裏にある深い意味や苦しみの歴史を無視して、自己の利益のために利用することが問題なんです。

 

今回は、外国(とくに北米)で大人気の高級スキンケアブランドのTatchaがそのブランディング戦略・ブランドストーリーにおいて、日本文化を盗用しているように思える件について書いていきます!

 

ちなみに、わりとネガティブな内容になっていますが、わたし個人の意見なので悪しからず。意見を押し付けようとしているわけではありません👍

 

 

Tatchaとは?

ãtatcha logoãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

名前の由来

 

「ん、抹茶??」と思ってしまいますが、Tatchaという名前は、Tatehana (立て花) + Chabana (茶花) からきているみたいです。前者は初期の華道の一種で、後者は茶道の茶席用にいけた季節の花らしい。

 

華道のミニマリストなアプローチが、‘Less is more’「より少なきはより多きこと」というブランド理念を表しているため、こういう名前にしたんだそう。

 

さらに詳しくはTatchaのページへ→

 

ブランド概要

 

SEPHORAで二、三年前から人気を集めている高級スキンケアブランド。一時期どのインフルエンサーも使っていた気がします。(ちょうどPRパッケージが送られていた時期だったのかも?斜に構えすぎ?笑)

 

公式のインスタページには、'Beauty for a lifetime, from Japan with love' と書いてあります。訳せば、「一生美しく。日本より愛を込めて」になります。

 

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Tatcha instagram

 

「日本より愛を込めて、と言ってるからには日本のブランドなんだ!海外でも人気とかすごい!

ロゴもなんとなく家紋っぽいし、海外で浸透しているmatcha(抹茶)というワードに似ていてブランド名のTatchaも日本っぽいし!」

 

...と思いますよね。

 

以下がTatchaのロゴ。

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そして橘をモチーフにした日本の家紋の例。似ている!

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http://yoikamonn.com/kamonnbunnrui/10-tc-10.html より

 

でも、日本のブランドではありません

 

創始者はアメリカ人のVictoria Tsaiという女性で、彼女が日本に旅行にきたとき「芸者」にインスパイアされて始めたブランドです。(この後ブランドストーリーのところで、ブランド名の起源についてもっと詳しくみていきます)

 

また、Tatchaの製品は日本では買えません。京都のフォーシーズンズホテルのエステで使われているくらい。

 

日本のブランドを装っているアメリカのブランド、と感ぜざるを得ない。

 

ちなみに、かなり著名なビジネスインサイダーという雑誌でも、

 

Tatcha is a Japanese skincare brand that takes inspiration from centuries-old skincare routines of geisha - https://www.businessinsider.com/tatcha-review-japanese-skin-care-2018-8

 

…って「ジャパニーズスキンケアブランド(日本のスキンケアブランド)」って言っちゃってる…!!

 

せめてJapanese-inspired skincare brand(日本文化からインスピレーションを受けたスキンケアブランド)と言ってくれ_(┐「ε:)_

 

それだけ勘違いしやすいブランドストーリーとマーケティング、ということですね。

 

有名なベストセラー商品は以下の二つです。

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The Silk Canvas $52

 

シルクキャンバスプライマー。ジェフリーとかが使ってるのみたことありませんか?Elfのプライマーとの比較動画もあげてます。

 

youtu.be

 

ウォータークリーム(保湿クリーム)。こちらもかなりの人気。そしてお高い…
 

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The Water Cream $68

 

ブランドについてはこれくらいにしておいて、次は創始者について。

 

創始者のVictoria Tsaiってどんな人?

 

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アメリカ生まれ、テキサス育ちの台湾系移民二世のVictoria Tsaiさん。サンフランシスコ在住。

 

ハーバードのMBAを持ち、ウォール・ストリートの銀行、P&G、スターバックスなど一流企業でキャリアを積んだよう。一人お子さんがいます。やり手のビジネスパーソン👍

 

創始者ですが、Tatcha内での肩書きはChief Treasure Hunter(宝探し隊隊長)となってます。

 

Tatchaのブランドストーリー

 

On a trip to Kyoto, she discovered a world of pure beauty, craftsmanship and heritage. An encounter with a modern-day geisha changed her life.

Victoria learned classical Japanese beauty secrets passed down by generations that took a different approach to skincare - that less is more. This skin care philosophy and time-tested ingredients were captured in an ancient text widely considered to be the oldest beauty book written in Japan, and perhaps the first such work of its kind. Within its three delicate, thread-bound volumes are seven chapters devoted to beauty and elegance in both appearance and spirit. This special guide informs and inspires the Tatcha collection. - Tatcha Our Story Our Story | Tatchaより

 

要約した訳↓

 

「Victoria Tsai氏がたまたま旅行で訪れた日本。そこで出会った一人の現代の芸者が彼女の人生を変えた。

彼女は、「より少なきは、より多きこと」という先祖代々受け継がれてきた日本式の美容の秘訣を知った。

このスキンケア哲学は、日本でもっとも古い美容本とされている古文書に記されていた。心身の美を説くこの特別なガイドこそが、Tatchaの根幹であり、インスピレーションだ。」

 

では、tatchaで聖典並みに大事にされているこの古文書はなんなのか?

 

Tatchaの聖典

 

調べてみたところ、『都風俗化粧伝(みやこふうぞくけわいでん)』という本です。先ほどのブランドストーリーのページにはリンクもないので、見つけづらいのですが、2012年まで記事を遡りまくったら書いてありました。笑 

 

じゃあこの都風俗化粧伝はどんな本なのか?とういう経緯でブランドの軸にすることになったのか?

 

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Having discovered the geisha's breathtakingly beautiful skin, I was intrigued, and began researching the ingredients and preparations that comprised their elegant rituals. Time and time again, we found reference to a book called Miyakofuzoku kewaiden (“Capital Beauty and Style Handbook"). We learned that the ancient text, dating back to 1813, is widely regarded amongst scholars as the oldest beauty book written in Japan—and perhaps one of the oldest surviving beauty books in existence. This lost manuscript is said to hold the beauty secrets that form the foundation of Eastern skincare, passed down from one generation of geisha to the next by word of mouth alone. Our curiosity aroused, we began to search for a copy.

Eventually, and thanks to a relentless woman on my team named Nami Onodera, we uncovered original copies of this precious text. - Timeless Geisha Secrets for Exquisite Skinより

 

Tsai氏が書くには、芸者の美しい肌に惹かれ色々調べまわっていたところ、風の噂でこの「失われた古文書(原文にもlost manuscriptと本当に書いてあります)」のことを聞きつけ、あちこち探し回ったあげくようやく手に入れた…!という感じなのですが、

 

東京都立図書館に所蔵されていました。

 

(全然失われてないじゃん_(┐「ε:)_)

 

以下は、東京都立図書館の都風俗化粧伝のページより本の説明。

江戸後期に出版された、化粧法や身仕舞い、身のこなし方などについてまとめられた資料です。冒頭に、この本のとおりに従えば、どのような容姿の女性であっても「百媚百嬌をそなふ美人となさしむること何のうたがふ処かあらん」と書かれています。8.都風俗化粧伝|東京都立図書館

 

わたしはこの本を読んでないので断定はできないけれど、この説明からすると、美容に特化した本ではなく、美容を含む全体的な作法についての本のようですね。

 

平凡社という会社からは、今でも文庫本として出版されています。全然失われてない!(2回目)

都風俗化粧伝 - 平凡社

 

聖典なのに...

 

で、実際には全然失われてなかった(3回目)この古文書ですが、これがどのようにtatchaの根幹となっているのか?

 

それが曖昧なんです!

 

化粧伝についての記事ページ(Timeless Geisha Secrets for Exquisite Skin)で「この古文書をいかに努力して探し当てたか」の話のあと、

 

  1. この本には古くから日本と周辺国で美容に使われてきた米ぬかや絹などの原材料について書かれている。
  2. 現代科学の観点から見ても、米ぬかや絹をスキンケアに使うことは理にかなっている。
  3. 都風俗化粧伝の著者は科学を知らなかったものの、先人の知恵は知っていた。
  4. 最近になってやっと私たちはシンプルが一番だということに気づいた。結局、科学は自然が大昔に明らかにしたことを再確認することしかできないのである

 

...というような流れで、最後は大学生のエッセイの結論にありがちな曖昧だけど壮大な文句で締めくくられます。(わたし)

 

でも本当に結果としてどこに持っていきたいのかわからない。「この古文書はTatchaというブランドのインスピレーションであり、原点だ」と言って記事が始まったのに、どういう風にTatchaで活用されてるのかそれ以降全然書いてない。ただ先人の知恵はすごかった、というごく平凡な結論にしかなってない。

 

こういうところになんとなく胡散臭さを感じてしまいます。(わたしが敏感すぎるのかも?)

 

米ぬかや絹が美容成分だということは、日本人にとってはほぼ一般的な知識では?と思うので、わたしの中の「本当はこうだったんじゃないか劇場」のシナリオはこう。

 

  1. 日本を旅行し、芸者と話し、そこからless is moreのコンセプトと、伝統的な原材料を使うという方向は決まっていた。
  2. でもなんか根拠が必要。このままでは説得力が足りない。西洋の消費者の目にそれっぽく映るもの、何かエキゾチックでオリエンタルなものないかなあ。
  3. 都風俗化粧伝というものがあるらしい!後付けだけど、なんとなくそれっぽく紹介してTatchaブランドの正当性を高めよう

 

いい加減斜に構えすぎかもしれませんが、 わたしからするとTatchaのこの話を信じるのは厳しい...もし本当にこの本が原点だとしても、使う言葉、文章が大げさすぎて事実を誇張してわざと壮大なストーリーを作り上げようとしてる感が否めない。

 

なんだか胡散臭いんです!!うまく伝わってるかな...わたしだけかしら...

 

 ちょっとダメな領域に入ってるんじゃない...?

 

そしてブランドストーリーについて細かすぎるチェックをいれるのはこれくらいにし、「これは...相当やばいのでは?なぜもっと問題になってないんだろう」と個人的に思ったTatcha公式商品たちを紹介していきます。

 

1. 'kimono'

 

まずこちら。

www.instagram.com

  

一つ目はこのTatchaカラーのkimono。気になるのは、これが着物ではなくどちらかというと浴衣、というかただの羽織なのにkimonoという名前なこと

海外ではこう言った羽織が確かにkimonoと言って一般的に売られていますが、Tatchaは日本にインスパイアされ、日本の文化を尊重しているというストーリーなのだから、個人的にそこは貫いて欲しいところ。

 

というかそんなことよりもっと重要なことが。

 

わたしもわからなくなる時がありますが、襟って絶対に右前

左前は亡くなった方に着せる時のみ

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http://miyaposi.com/kimono/talk01/ki003.html より

 

さっきのkimonoの画像を見ると左前...死装束として売ってる???

 

日本文化をブランドの軸にしながらも、実際はあまり尊重していないように見えます。

 

2. 'Channel your inner geisha'

 

次はこちらの記事。

www.tatcha.com

 

'Channel your inner 〇〇'というのは「〜のようにする」みたいな意味の言い回しです。なので、この記事は「芸者のように振る舞うためには」くらいの訳。題は別にいいのですが、問題は記事の内容で...

 

以下抜粋

Synonymous with “art person” in Japanese, geisha are the epitome of style and grace. I’ve long been fascinated by their mesmerizing beauty and poetic movements. [...] I believe that we all have a bit of geisha in us, we just need a little help bringing it out.

Adopt the wisdom of the ages 

Look the part 

Red your lips

Realize your true beauty

[...] The art of being a true geisha takes years of diligent practice, but I hope these tips help you embody your inner geisha.

https://www.tatcha.com/blog/how-to-channel-your-inner-geisha.html より

(訳)芸者とは「芸術の人」という意味で、とても優雅。その美しさと詩的な振る舞いにわたし(Tsai氏のこと)は長年強い関心を持ってきた。(中略)みんな内なる芸者を持っていて、それを引き出すのは簡単。

  • 先人の知恵を受け入れる
  • それらしく見えるようにする
  • 唇に紅を引く
  • 自分の本当の美しさに気づく

(中略)本当の芸者になるには何年も修行が必要だけど、このアドバイスであなたが芸者らしくなれますように。

 

芸者らしく振る舞いたいというのは良いのだけれど、アドバイスが表面的すぎる!!唇に紅を引くとか特に。そこらへんの自己啓発本にも劣る。(だんだん辛口になってきた)

 

最後に付け足しのように、芸者になるには修行が必要と言ってるからまだいいけれど、これがなかったら完全になめているとしか思えない芸者は「芸術の人」だと最初に紹介してるのに、芸について何も触れていない

 

わたしも芸者について詳しいわけではないけれど、その世界に入っていくには相当な覚悟と何年にもわたる厳しい芸の鍛錬が必要だということは知ってる。それなのに芸という核心に触れずに、まるでただ可愛らしく座っていれば芸者、とでもいうようなこの記事はないと思う。

 

ここでもまた、ブランドの軸になっている芸者を軽んじているような印象。

 

断定はできないけれど、こういうのがあるとブランドストーリーの胡散臭さに加え、ますます日本の文化をお金儲けのために利用してるんじゃないかという疑念が強まります。

 

これが日本との繋がりを何も主張していないKVDとかだったら、「いつものことねーKVDだし」とまだ受け流せますが、こんなに日本をブランドの核にして、日本の文化が起源だと主張するTatchaからだと、裏切られた感と利用されてる感が数倍強い

 

結局のところ

 

多くの北米の消費者はTatchaは日本のブランドだと思っています。ググって見たら、Trip Advisorで「Tatchaは日本のどこに行けば買えるの?」という訪日旅行客の質問スレッドなどありました。

 

本当にTatchaはうまくやってるな、という印象。こう言ってはステレオタイプ化しすぎかもしれませんが、オリエンタリズムやスピリチュアリティ、エキゾチズムに憧れる30代40代の中流階級の白人女性を狙ってるな、という感じ_(┐「ε:)_

 

そしてなんとも言えない残念さがある。ブランドの軸にするくらい日本文化を尊重しているように見えながら、実際はしていないこと。古文書の都風俗化粧伝にしろ、kimonoにしろ、inner geishaにしろ、日本の文化は後からかこつけたお金儲けのためのツールのような印象を受けるのが悲しい

 

インフルエンサーたちがこぞって使ってた時とか、パッケージも美しくて、tatchaのものすごく欲しいな!と思ってた時期もあったけど、知れば知るほど残念な気持ちしか残りませんでした。

 

ここまでかなりネガティブでしたが、わたし個人の意見なのでどうか悪しからず。Tatchaの商品は評判がいいし、好きならそれはそれで問題ないと思います。ただ、こういう見方もあるよ〜というぐらいに受け止めていただけると嬉しいです。

 

プラスα

 

自分の国だとなかなかわかりづらいので、最後に他の文化の盗用の一例も。

 

こちらはイタリアのブランドが、ネイティブアメリカンの文化を盗用したケース

 

羽の頭飾りは本来部族の長の男性にのみ許されるもにもかかわらず、女性の白人モデルもつけています。さらにネイティブアメリカンが白人移住者によって虐殺された歴史も考えると、こうして部族の伝統をただのファッションとして、しかも白人が真似するのはおかしいですよね。部族とのコラボで、彼らが商品を身にまとい、その利益も彼らにいくならまだ良いが、そうではないのでこれは完全に文化の盗用。

 

www.instagram.com

 

(ちなみにこのインスタ垢Diet Prada、ファッション業界のハゲタカって感じでコピーの問題だったり、文化の盗用だったり、色々暴いてくれます。辛口なコメンタリーが好きだったらぜひオススメしたい)

 

【補足】2019-6-15 Tatchaの今後

 

6/10の記事ですが、Tatchaがユニリーバに買収され、その傘下に入ることが決まったそうです。金額は5億ドル(日本円だと540億円)とも。

Unilever Buys Tatcha Skincare | News & Analysis | BoF

 

これをきっかけにTatchaの文化を軽視する(しているように感じられる)姿勢にも変化があるかもしれません。

 

一方で、供給体制に変化を強いられた場合、今までのクルエルティーフリーステータスが脅かされる懸念もあるのかなと思います。

ユニリーバはクルエルティーフリーを支持するとは表明していますが、Dove以外まだ認定を受けていないようです。

Unilever Announces Support of a Global Ban on Animal-Tested Cosmetics | Allure

 

尊敬するThe Little WhimのCookieheadさんに、ツイッターにて教えていただきました!ありがとうございます😊

 

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最後までお付き合いいただきありがとうございます!では😊

 

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